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【コラム】M&Aのきっかけ

セレンディップ・フィナンシャルサービス株式会社 シニアマネージャーの田澤です。
「M&A」をテーマにしたコラムの執筆担当となりました。
当社グループで得たM&Aに関する知見をもとに執筆して参りますので、M&Aの知識を身に着けたい方やこれからM&Aを学ぶ方、また第三者承継について興味がある方などなど、M&Aに関わる皆様にとって少しでも参考になればと思います。
第一回目は「M&Aのきっかけ」です。

1.M&Aの現状

公表されている日本企業のM&A件数は、2011年の1,700件程度から、2019年は4,000件を超え、過去最高件数で推移したと言われています。2020年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響によりIN-OUT型M&Aを中心に停滞した関係から9年ぶりの減少に転じましたが、3,730件と依然として高い水準で推移しています。

2.M&Aのきっかけ

近年のM&A件数増加は、以下の2点に要因付けられるように考えます。

(1) VUCA(ブーカ)

企業を取り巻く社会環境は目まぐるしく変化しており、将来の予測が読み辛く、変化に取り残される危険性が高まってきています。サブプライム問題、リーマンショック、東日本大震災、そして新型コロナウイルスの感染拡大等、予想し得ない事柄が、経済に大きなインパクトを与えています。自動車関連業界においても、電動化の前倒し、モデルチェンジ、最低賃金の変動、5G、AI・IoT等、業界を取り巻く環境は劇的に変化しています。また、日本国内の人口は減少の一途を辿っており、国内マーケットの縮小が予想されます。
そのため、既存事業のシェア拡大を図りスケールメリットを追求することや、従来のビジネスモデルのみではない新製品開発・新市場開拓による事業の多角化、ノンコア・不採算事業等の切り離しによって、事業ポートフォリオを再構築する必要性が高まってきています。

※VUCA
「Volatility(不安定性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字をとった造語。取り巻く社会環境が目まぐるしく変化し、想定外の出来事が起こり、複雑性が高まり将来予測が困難な状況を意味する言葉。

 

・新規事業領域への成長戦略

 既存のビジネスモデルの強化も重要ながら、既存のビジネスモデルを起点に、第二、第三の柱となる新規事業領域を開拓することは、売上拡大が見込める他、事業のリスクを分散できる可能性があります。
しかし、ゼロからの立ち上げは時間とコストがかかる上、投資に対する回収可能性が読みづらいことから、二の足を踏んでしまう傾向があります。結果的に新たな挑戦ができず、既存のマーケット範囲内での市場浸透戦略に舵を切らざるを得なくなります。
M&Aは、既にその事業を営んでいる企業や事業を買収することになります。そのため、経営資源(取引先、調達先、従業員、固定資産等の有形固定資産、特許・ノウハウ等の無形固定資産等)を短期間に取得することが可能であり、ゼロから事業を立ち上げる、あるいは新市場を開拓していくことと比べれば、相対的にリスクが低いと判断することもできます。

・経営資源の選択と集中

 一方、グループ子会社や事業部門を外部へ切り出すカーブアウトの動きが拡がっています。グローバル化の進展やデジタル革命により経営環境が急激に変化する中、企業が持続的成長を実現するためには、経営資源をより成長が見込める分野(コア事業の強化や将来への成長投資等)に集中させる必要があり、そのための事業ポートフォリオの見直しと必要な事業再編の実行が急務となっています。

 

(2) 後継者問題

団塊世代が70歳代に突入し、日本国内の後継者問題は社会問題となっています。
70歳未満の経営者が136万人に対し、70歳以上の経営者は245万人であり、国内の約60%以上が「経営者の高齢化」という問題を抱えていることが分かります。さらに深刻なのが、この70歳以上の経営者のうち、約半数となる127万人が「後継者が決まっていない」と回答していることです。
そのうちの半数が黒字企業の可能性があり、今後10年間で企業や事業の譲渡・売却・統合の検討数は60万件以上(年間平均6万件以上)になると言われています。

 

この後継者問題の背景には、後継者候補が ‘いない’  ‘継がない’  ‘継げない’の3点が主な理由と考えられます。先が見通し辛い時代だからこそ、後継者に求められる能力は、高度化且つ複雑化しており、後継者の選定はさらに困難になっていくと思われ、これに起因するM&Aは今後も増加していくものと推察されます。

3.まとめ

このように、先が読み辛い時代に突入したからこそ、改めて自社のビジネスモデルを見つめ直し、事業ポートフォリオの強化もしくは再構築する必要性が高まってきています。経営資源の選択と集中を実現するために、M&Aは有効な手段といえます。
また、この激変していく事業環境下で、後継者となる人材は、それ以上の変革を企業に与えられる人材でなければなりません。後継者選定の難易度は高まる中、経営者の高齢化や新型コロナウイルス感染拡大の影響とも相まって、今まで先送りしてきた事業承継問題の顕在化が進んできており、企業や事業の譲渡・売却・統合を検討する経営者は今後も増加していくと推察されます。
M&Aは手段の一つであり、目的ではありません。目的は、「いかに成長戦略を描き、自社を継続・発展させていくか」であります。そのため、自社の成長戦略を描くにあたって、「M&A」はキーワードの一つと言わざるを得ないでしょう。

 

 

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